仲良く楽しく理想を叶える 音楽一家の暮らしの変奏曲
九州きっての繁華街から電車で数十分、とある住宅街の一角に柏木家はある。休日になると庭にタープが張られ、のびやかな子どもの声が聞こえてくる。その団らんを包み込むように、いつも小さく、ピアノの旋律が流れている。憧れの暮らしを楽しみながら形にしてきた一家の時間は、今日も世界に一つだけのリズムを刻む。
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夫:かつじろうさん
福岡県北九州市生まれ。39 才。大学は京都。就職で首都圏に出た後、福岡にUターンした。ギターと歌とこよなく愛する。 -
妻:ひとみさん
福岡県うきは市生まれ。37 才。マンドリンの社会人楽団に所属していた経歴を持つ。趣味は音楽鑑賞。好きなピアニストは清塚信也さん。 -
こどもたち
しほちゃん 9 才(左)。ピアノと運動と絵本が好き。/こうきくん 2 才(右)。照れ屋でマイペース。音楽の才能は未知数。
写真:tsukao
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音を楽しむ
-いつも家に流れるもの-
ジャズとピアノレッスン
<<再び、ご自宅にて>>

しほさんがジャズピアノを始めたと伺って、その話を聞いてみたいなと。
ひとみ 今は12月の発表会に向けて練習中してます。発表会では、先生たちのウッドベース、ドラムとセッションするんです。
そうなんですか。普段の練習は、ひとみさんが見ているんですか?
ひとみ そうです。長年ピアノをやっていたので、時間があるときは隣に座って、一緒にやります。

練習で気にかけていることありますか?
ひとみ 毎日、絶対やることです。でも、そんなに厳格なものじゃなくて、1回だけ弾いて終わりはやめようねって。基礎練習と曲で、30分もやってないと思います。時間じゃなく、この子が演奏に納得できたどうかが大事かなって。
なるほど。ちょっといつもの感じで練習してみてもらってもいいですか?
ひとみ じゃあしほ、やろう!
しほ うん……(少し緊張気味に弾き始める。しほちゃんによる演奏。曲はジャズのスタンダードナンバー「PERDIDO〈パーディド〉」)
一同 (拍手とともに)すごーい!!
ちゃんとジャズですね。ちゃんとかっこいい。
ひとみ 楽譜はあるんですけど、最近はコードを見て弾く練習ですね。
しほ 左手はコードしか書いてない。(実際に音を鳴らしながら)Cマイナーセブンはこう、Fセブンはこう。
へー。クラシックの「ブルグミュラー」とかとは、違う世界ですね。
ひとみ 「ブルグミュラー」もやってました。発表会が年2回で、6月はクラシックで、12月はジャズ。結構いろんなイベントがあるんです。
じゃあ両方やってるんですね。でもジャズって、難しいですよね。
ひとみ 難しいと思います。先生が出ませんかって推薦した子だけやるんです。
センスがあるんですね、きっと。

ひとみ (こうきくんが鍵盤を叩き始める)じゃあみんなで一緒に弾く?
しほ こうちゃん、あれ弾こうか。(きらきら星を弾き始める)
すごい、弾けるんですね。この電子ピアノは、いつ頃買ったものですか?
かつじろう しほが習い始めた3~4歳のときですね。夫婦2人とも子どもの頃からピアノをやっていたので、習わせたいなと思って。
ご夫婦で弾けるなんて、すてきですね。
ひとみ でも2人とも音楽がわかるから、ちょっと厳しくし過ぎちゃうんですよ。音が違うとか言ってケンカしたり(笑)。
熱いですね。じゃあ、こうきくんもいずれは……
ひとみ やらせたいです。通っているところの先生は一番早くて2歳半からできるって言っていたので、そろそろです。
楽しみですね~。
夫婦の楽器遍歴
通っているピアノ教室は、個人のところなんですか?
ひとみ そうですね。ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)の指導資格を持った先生がいらっしゃって。発表会では講評を書いた紙をもらえるんです。各地から来た先生方から「よく弾けてました」とか「もうちょっとこうした方がいいです」って。

へー。すてきですね。お二人とも、ピアノはどれくらいやってらっしゃったんですか?
かつじろう 幼稚園の年長から中学校2年生くらいまでですね。8年間かな。
ひとみ 私は年長さんから高校生までやってました。クラシックと、あとはポップスとかも弾いてましたね。久石譲さんとか、ディズニーとか。
大学に入るときに辞めたんですか?
ひとみ 受験で辞めちゃったんです。で、大学に合格して家を出てから、今度はサークルに入ってマンドリンを始めるんですよね(笑)。
え、マンドリン?
ひとみ 中学の吹奏楽部でトランペットをやっていて、それもいいかなと思ったんですが、「マンドリン」っていうのを見て面白そうだなって。結局はハマってしまい、最終的に社会人の楽団にまで入っちゃいました。
すごい。本格的ですね。
ひとみ 北九州のマンドリン楽団に入って、4年間働きながら週末に練習してました。社会人なのに合宿とかもあるんですよ。うんと年上の方たちが、夜遅くまで喧嘩しながら音楽論を語り合ったりして。大人の青春、みたいな(笑)。結局、結婚して、引っ越すまでやってましたね。

かつじろうさんも、かなりピアノ歴が長いですよね。
かつじろう 中学時代はサッカーもやっていて、ピアノは私も受験で辞めました。高校ではサッカー部と生徒会。でも途中でサッカー部を辞めて、社会人のフットサルチームに入ったんですよ。
フットサル。なんでまた?
かつじろう ちょうど流行りだした頃で、楽しかったんです。地方で好きな人が集まってくらいのレベルでしたけど。一応、北九州市のチームの選抜だったんです。でもそれも、大学で辞めてしまって。
ひとみ その話、初めて聞いた気がする。大学では、クラシックギターサークルに入ってたよね。
また違う楽器が出てきました(笑)。
かつじろう あるコンサートでクラシックギターを見て凄いなって思って。舞台に立つのに憧れたんですよね。
ギターに目覚めたんですね。
かつじろう ギターはもともと好きで、中学生の頃から趣味でアコースティックギターをやってたんです。フォークソング世代の父のギターを、こそっと触り始めたのがきっかけで。
どんな曲を弾いてたんですか?
かつじろう ゆずとかですね。実は、僕ら夫婦の付き合いも、ゆずのDVDの貸し借りから始まってて。

あ、そうなんですね。
ひとみ 音楽つながりでいうと、私の楽団の指揮者が、夫のお父さんの部下だったんです。結婚のことを伝えたら、柏木さんって、あの柏木さんの息子さんですかって(笑)。
それは驚きます。お二人は、音楽でつながってるんですね。
音楽と暮らす家
かつじろう よくよく考えてみると、家の中でいろんなことをしている間も、スピーカーでピアノ中心のBGMをかけてますね。
ひとみ そうだね。夜8時くらいになると、テレビを消してずっとジャズとか流してます。たぶんそれでしほの耳が育って、弾けるようになったんじゃないかな。
なんだか、トラップ一家みたいですね。
ひとみ 音楽はなんでも好きです。
好き嫌いはないんですか。
ひとみ そうですね。大きく言えば、ヘビメタとかにはあまり興味がないというか。ポップスとクラシックとジャズの、大きな円がかぶさるところがなんとなくあって、その中のものは何でも聴く感じ。
なるほどなるほど。
かつじろう あと私の場合、オーディオ好きっていうのもあります。大学時代、かっこいいステレオの機械と音質に惹かれて中古のオーディオをなけなしのお金で買って、大きいステレオのスピーカーを部屋に置いてました。そしたら段々いろんなジャンル聴くようになって。
好きな演奏家や指揮者っていますか?
ひとみ 好きな方はいますけど、あまりこだわりはなくて。ジャズっていうジャンルをふわっと聞いてる感じです。ウチの父も感覚が似ていて、オーディオ好きで、家にいっぱいスピーカーがあって、いつも音楽が流れてたんです。だから私も、家の中にそういう音楽が流れてると、心地よくて。
「聞く」のと「弾く」のだったら、どちらが好きですか?

ひとみ 私は、弾ける環境があるなら弾きたいですね。ピアノもそうですし、子どもが大きくなったら、また前に所属していたような団体でマンドリンもやりたい!
かつじろうさんはどうですか。楽器をもう一度始めるなら、何がいいですか?
かつじろう 私は、アコギをやりたいです。歌を歌いたくて。
ひとみ 彼、歌えるんですよ。上手なんです。
楽器はまだ持ってるんですか?
かつじろう 妻のマンドリンは実家に保管していますね。私のギターはありますけど、この家に来てからはやってないかな。持ってきましょうか?
ぜひお願いします。
かつじろう (2階からアコギを持ってくる)わー、全然弾いてないから覚えてないかも……(チューニングしながら弾き始める)

ひとみ おお~。まだ弾けるね。
かつじろう 3年ぶりぐらいに弾いてる。久しぶりだ~。(ゆずの「飛べない鳥」を1フレーズ歌い切る)
一同 おおお~!(拍手)
例えば、家族一緒にやりたい曲ってありますか? サウンド・オブ・ミュージックみたいな。
かつじろう いいですね(笑)。ドはドーナツのド♪って。
ひとみ 確かに、何かできたらいいかも。
お話を聞いてると、お二人の中に一番あるのは音楽なんですね、きっと。
ひとみ そうだと思います。
かつじろう そうだね。うちには、音楽が中心にあるね。
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