家と暮らしを見つめるウェブマガジン

しもだ家の人々

わが家のもてなし しもだ家

穏やかな愛を育む二人の新居は 親戚たちが集ったみんなの家

午後の陽射しが木漏れ日となって、カーテン越しにリビングへと差し込む。木々が風に揺れるたびきらめき、居る人を穏やかな気持ちにさせてくれる。新婚の下田さんご夫妻は今日、新居にお客さまを招く。隣に住む龍田さんご夫妻だ。かつてここは、龍田さんのご両親が老後を過ごし、お盆やお正月には親戚みんなが集まる家だった。

  • しもだ家・夫:ゆうきさん

    しもだ家・夫::ゆうきさん
    長崎県佐世保市生まれ。24 才。電化製品店勤務。趣味はゲーム全般とプラモデル。自称完全インドア派。

  • しもだ家・妻:まゆさん

    しもだ家・妻:まゆさん
    長崎県諫早市生まれ。26 才。システムエンジニア。祖父が農家だったため農作業が得意。ゲームも好き。

  • たつた家・妻:れいこさん

    たつた家・妻:れいこさん
    長崎県長崎市生まれ。年齢は内緒。エアロビクス、ミニバレー、音楽ライブと、とにかく忙しい専業主婦。

  • たつた家・夫:とよあきさん

    たつた家・夫:とよあきさん
    長崎県島原市生まれの 76 才。新聞スクラップと新聞への随筆投稿に執念を燃やす日々。静かなる酒豪。

写真:tsukao

1

旧居と新居
-両親がいた家に越してきた新婚さん-

下田家の前の住人

(下田家の隣に立つ龍田家の玄関先で)龍田さん、はじめまして。今日はお隣に住む下田さんの新居にお招きいただいています。

れいこ お待ちしてました!

とよあき どーも、こんにちは。

XXXX

れいこ ひとまず、どうぞ、入ってください。

それじゃあ、少しお邪魔します。うわ、玄関から絵がたくさんありますね。これは水彩画ですか?

れいこ そう、水彩画。ほとんどが父の作品です。

すごい、本格的ですね。これは、どこの風景なんですか?

れいこ ふふふ(笑)。どこでしょう?

うーん……。草原?

れいこ これはね、長崎の干潟にまつわる風景なんです。

干潟……!なるほど。いろんな表情があるんですね。

れいこ そんなに有名ではないんですが、全国的にも知られた賞をいろいろ取ってます。全部、干潟の絵で取ってるんですよね。

XXXX

これだけ干潟を描く理由は、何かあるんですか?

れいこ それがね、何故かは分からないの(笑)。聞いたことなくて。

不思議ですね。長崎県で見られる干潟の風景なんですよね?

れいこ そうだと思います。ちなみに私が一番気に入ってるのは、これ。

とよあき 両親との家族写真のところに置いてある絵ですね。

XXXX

確かにこの絵、目を引きますね。干潟以外を描くことは無かったんですか?

れいこ あまりないですけど、花の絵も描いてますね。あと、私の大学を描いてくれたこともありました。

大学ですか?

れいこ 私、長崎市のオランダ坂のところにある大学に通っていたんです。その風景を、父が描いてくれました。

素敵なお父様ですね。じゃあいつも、部屋で絵を描いているイメージですか?

れいこ そうですね。亡くなるまで描いてましたね。隣に住んでいた頃は、洋間の自分の寝室に、イーゼルとか道具一式を持ち込んで、アトリエにしてました。

どれも素敵な額に入って、大切にされているのが分かります。

XXXX

れいこ 沢山あったので処分してしまったものもあります。でも遺品ですから、好きなものを選んで、できるだけ残しました。ほんとは、こーんなに(手を一杯に広げる)大きな絵もあったんです。

それは、捨てられないですね。

隣に行くのは日常茶飯事

お父さんが絵を描かれていたのは、ご両親がお隣に住んでいらっしゃったときなんですね?

れいこ そうですね。私はもともと長崎市内に住んでいたんですが、諫早市にお嫁に来たんです。そしたら、ここに広い土地があったので、私たちの家の隣にもう一つ家を建てて、両親を呼び寄せたんです。

れいこさんは一人っ子ですか?

れいこ いえ、兄がいます。兄も長崎で、そう遠くないところに住んでいたので、兄の家族も、しょっちゅう遊びに来てました。

れいこさんのお子さんも?

れいこ ウチの子どもたちが行くのは、日常茶飯事でしたね。一緒に住んでるような感覚で。私の子どもたちも、父の絵を何枚かずつ大事に持ってます。ちなみに、私の母の趣味は「壺」でした。

XXXX

壺!?

れいこ ちょっとこっちに(リビングの隣の引き戸を開ける)。ほらこんな感じで、和室の床の間にいろいろな壷を置いて、飾ってたんです。

ご両親は文化的な方だったんですね。れいこさんも、その血を受け継いでますか?

れいこ それがね、全然違うの。私は動く人。根っからのスポーツ系(笑)。主人は文化系なんだけど、私は体育会系なんです。ただ母は昔、女学校でバスケットやってたみたいです。

とよあき 女学校ですから、戦前の話です。

れいこ 母は確か、昭和8(1933)年生まれ。いま生きていたら92歳ですね。

お写真もたくさん飾ってありますね。お母さまは、どちらですか?

れいこ これですね。父と母の結婚式です。

XXXX

XXXX

時代を感じますね。というかお父様、とても色っぽくて、ハンサムですね。

れいこ そうですかね(笑)。あとこれが、亡くなる少し前の母と私たち家族の写真ですね。父が先に亡くなって、しばらく母は一人で暮らしていました。もちろんお隣なので、毎日のように行ってました。

とよあき 僕もときどきお昼を買って、お母さんに持っていったりしてましたね。

れいこ この写真は母が亡くなる1カ月くらい前に、写真館で撮ったんです。このときはもう、母の余命が短いって分かってました。でも母には告げず、みんなで記念に撮ろうよ、みたいな感じで撮りに行ったんです。紙の写真が欲しかったので。

わかります。

れいこ 最後の母の誕生日に長崎ガーデンテラスで、みんなそろって食事できたことも、いい思い出です。

XXXX

とよあき 長崎のまちが一望できるところで、ちょっといい和食を食べました。

そこは本当に、いいところですよね。龍田さんご夫婦や、お子さんたちの写真もたくさんありますね。どれもいい写真ばっかり。

れいこ 他にも、写真はいろいろあります。今日はアルバム用意してて、その中には隣の家で撮った写真もありますよ。

ぜひ見てみたいです。そうしたらこのアルバム、お隣に持って行ってもいいですか?

とよあき じゃあアルバムは僕が持ちましょう。

れいこ あ、そろそろ行った方がいいですよね?

もうこんな時間ですね。行きましょう。

れいこ ちょっと、準備しますね。

下田さんちのお出迎え

れいこ お待たせしました!(ご主人と玄関をでてくる)

XXXX

ではさっそく行きましょう。(歩きながら)下田さんの家に入るのは、初めてですか?

れいこ お会いしたことはあるんですけど、中には入ったことがなくて。

とよあき 私も初めてです。

れいこ 私は手土産にお花を持ってきたんです。いい感じでしょ?

とても素敵です。(少し歩いて玄関前に到着)それじゃあ、インターフォンを押しますね。

ゆうき (インターフォン越しに)はい。

れいこ たつたです。

ゆうき お待ちしてました。いま開けます。(下田さんご夫妻がでてくる)

XXXX

れいこ こんにちは。お久しぶり。

ゆうき ようこそ。どうぞ中へ。

それでは、お邪魔します。

れいこ (玄関を入って)わ、ここからもう違う!

とよあき おー!(感動する声)

まゆ スリッパをどうぞ。

ありがとうございます。

ゆうき 上村さん(カチタスの営業担当)も来られています。

れいこ え、そうなの?

上村 ご無沙汰しています。

れいこ お久しぶり~!

まゆ みなさん、こちらにどうぞ。

れいこ うわ~。リビング広いですね。

ゆうき よかったら、テーブルのお菓子も自由に食べてください。

とよあき ありがとうございます。

あ、シガール!なつかしいですね。

れいこ 私、手土産を渡してもいいかしら。

XXXX

まゆ 実は気になってたんです。

れいこ もう見えてるもんね。いろいろ考えたんですけど、お菓子はご用意されてるかなって思って、お花にしました

まゆ え、うれしい!

れいこ 私みたいなおばちゃんからあげるものだから、あんまり派手にしないでって頼んだんですけど、趣味が合うかな。よかったら受け取ってください。

まゆ ありがとうございます! やったー、かわいいっ!

XXXX

れいこ ほんとによかった。花瓶とかあります?

まゆ あります!

グリーンも入って、かわいいですね。どこで買われたんですか?

れいこ ここから山半分くらい越えた飯盛(いいもり)っていうところにあるお花屋さんです。車で10分くらい。自分でスマホで検索して、一応どんなお花が置いてあるか下見に行ってみたの。そしたら、いいお花が置いてあったから、ここにしました。

ゆうき ほんとにありがとうございます!

まゆ あ、いい香りが。

れいこ する?よかった!

まゆ お茶もどうぞ。

ゆうき 僕がコーヒーとかが飲めないので、ルイボスティーなんですけど。

れいこ いただきます!実はわたしもカフェインが苦手で。ルイボスティーとか、韃靼そば茶とか、黒豆茶とか、そういうのばっかり飲んでるの。

下田さん、いろいろとありがとうございます。今日は、もともとの家の持ち主でいらっしゃる、お隣の龍田さんと一緒に、下田さんの家や暮らしのことを語り合いたいと思ってます。

一同 よろしくお願いします!

XXXX