家と暮らしを見つめるウェブマガジン

かしわぎ家の人々

我が家のじかん かしわぎ

仲良く楽しく理想を叶える 音楽一家の暮らしの変奏曲

九州きっての繁華街から電車で数十分、とある住宅街の一角に柏木家はある。休日になると庭にタープが張られ、のびやかな子どもの声が聞こえてくる。その団らんを包み込むように、いつも小さく、ピアノの旋律が流れている。憧れの暮らしを楽しみながら形にしてきた一家の時間は、今日も世界に一つだけのリズムを刻む。

  • 夫:かつじろうさん

    夫:かつじろうさん
    福岡県北九州市生まれ。39 才。大学は京都。就職で首都圏に出た後、福岡にUターンした。ギターと歌とこよなく愛する。

  • 妻:ひとみさん

    妻:ひとみさん
    福岡県うきは市生まれ。37 才。マンドリンの社会人楽団に所属していた経歴を持つ。趣味は音楽鑑賞。好きなピアニストは清塚信也さん。

  • こどもたち

    こどもたち
    しほちゃん 9 才(左)。ピアノと運動と絵本が好き。/こうきくん 2 才(右)。照れ屋でマイペース。音楽の才能は未知数。

写真:tsukao

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庭の戯れ
-ウチで楽しむソト遊び-

芝生と畑のある庭

今度は、お庭でどんなことを楽しんでいるのか、教えてください。

かつじろう もちろん。じゃあ庭に出ましょう。(庭へ移動)。ここはもともと土だったので、雑草を抜いたり石を拾ったりしながら整地をして、人工芝を敷きました。

こっちの一角だけは畑ですね。

かつじろう あ、そうだ……(どこかから道具をもってくる)こういう土を掻いたり固めたりする道具を使って整備しました。ちなみに、これをこうすると……(リビングの掃き出し窓にかかっていた白いシートの両端にポールをつけて立てる)。

なるほど。「日よけ」になるんですね。

かつじろう ええ。日中はだいたいこのスタイルです。

お隣とも近すぎないし、空がすとーんと抜けてるので、気持ちがいいですね。

かつじろう もともと駐車場が車1台分だったんですが、来客用に縦列2台に拡張していただいて。でも普段は使わないので、この車の後ろで、しょっちゅう子どもたちが遊んでます。

ここも遊び場なんですね。

ひとみ そうですね。しほ、おいで~。

しほ は~い(ホッピングをもって出てくる)。

あ!それすっごい懐かしい!

しほ (ホッピングで遊び始める)。これ最高50回くらいできたことある。

うまいですね。体幹がいいんですね、きっと。確かに、こうやって遊ぶ分には十分ですね。

かつじろう ここにタープを立てて、キャンプみたいにすることもあります。庭の日よけの下にはテーブルを広げたり。やってみましょうか?

お願いします(かつじろうさん、組み立て始める)。その間に、畑をみせてください。

ひとみ ええ、ぜひぜひ。……この、いま目の前にあるのが大葉ですね。すごい茂っているのに、一枚一枚がちっちゃいんですよね。でも食べられます。で、こっちはオクラです。

すごい立派ですね。

ひとみ 今朝も2~3本くらい収穫しました。もうこの辺のやつも収穫していい頃ですね。

ひとみ これは分かります? まだ緑ですけど、赤ピーマンなんです。

ホントだ。ちょっとだけ赤くなってる。

ひとみ 子どもってピーマンの味が好きじゃなかったりするじゃないですか。でも赤ピーマンは熟していて苦くないので、食べてくれるんです。

なるほど~。

ひとみ こっちは中玉トマト。もう終わりかけですけど。あれはバジルですね。ウチではよく、ピザトーストに載せます。

ちょっとした食糧庫ですね。

ひとみ 私の祖父母が農家で、亡くなった後に父が畑を受け継いだんですけど、会社員だったので、本業としては継げなくて。でも、もったいないから、家族が食べる分は作ろうって農業を始めたんです。そしたらだんだん上手になってきて、今やエキスパートになってます(笑)。

へえ~。血は争えないですね。

楽しく美味しい農作業

ひとみ ここの庭の土は赤土っていって、あまり農業に適した土じゃないんですね。だから、野菜を育てられるか、父に見に来てもらったんですよ。そしたらやっぱりよくないっていって、ホームセンターで土とか肥料とかをいろいろ買ってきて、夫と一緒にやってくれて。

いまご実家では、どんな野菜を作ってるんですか?

ひとみ もう何でも(笑)。毎年、春夏秋冬それぞれに全部作るので、季節の野菜はほとんどあります。

それは結構な広さですよね。

ひとみ 田舎なので土地ばっかりあるんですよ。 私が小さい時は、家に畑も田んぼもあるから、夏の始めは田植えを手伝ったりもしてました。

 野菜やお米の農家だったんですか?

ひとみ いや祖父母の時代は牛がいたんです。本業は酪農で、牛乳を出荷してました。その傍らで野菜を作るっていう。でも父は継ぐまで、イチから野菜を育てたことはなかったと思います。

そうなんですね。

ひとみ 今はもう楽しくてしょうがないみたい。なにより孫たちが喜ぶので。しほは、大根が苦手なんですけど、「じぃじの野菜なら食べる」っていうんです。

それは、かわいいすぎる(笑)。

ひとみ 野菜を食卓に出すたびに、「これじぃじの野菜?」って聞くんですよ。だから、実家に帰るたびに、袋いっぱいに野菜を詰めて「持ってけ、持ってけ」って言うんです。

はははっ。ひとみさんは、野菜を作っていて楽しいですか?

ひとみ 楽しいです。私も子供のときは、おやつに畑でトマトをちぎって食べてた人なので(笑)。でもそのとき、すごいな、こうやって野菜ってできるんだな、って感じて。この子たちにも同じ体験をさせられるといいですね。

この畑は、ひとみさんの担当なんですか?

ひとみ 夫と一緒にやってますね。子どもたちが遊んでる時に水をあげたり、次に何を植えるかを話し合ったりして。

楽しそうですね。でもお父様みたいに、実践してる詳しい人がいると心強いですね。

ひとみ そうなんですよ。農機具とかも全部、使わないものはあげるよ、持ってけっていって(笑)。

それはもう、やめられないですね。あ、キャンプっぽくなってきましたね。これはかつじろうさんの趣味ですか?

ひとみ そうです。私はもう全く分からなくって。たぶん、こういうのが夢だったんですよ。彼の実家のお父さんもやってたので、実家から持って来た道具もあると思います。

かつじろう (車1台分の駐車場のスペースに)タープ、建ちました!

いいですね。これがいつものスタイルですか?

ひとみ そうですね。近所でも若干、有名になっちゃって。「すごい本格的ですね」「楽しそうですね」って。

確かに、「ちょっとお邪魔していいですか」って言いたくなります。

かつじろう じゃあこの芝生のテーブルに、ティータイムの準備をしちゃいますね。

細やかなる父の情熱

いま並べてるアウトドア系の小物も、ご自身で?

かつじろう そうですね。テーブルセットも小物も全部選んだのは私ですね。

こういう「おうちキャンプ」は、家を買った時からやりたかったんですか?

かつじろう そうです。やりたかったことを全部つめこんだ感じで(笑)。はい、しほ、こうちゃん、休憩です!

しほ 休憩~!(こうきくんと一緒に席につく)。

これだけできたら、カフェに行く必要もないですね。この椅子もレトロでいいですね。

かつじろう 実家からもってきて、金だわしで洗いました。穴ぼこもあるんですけど、使えるので再利用です。

すてきだと思います。

かつじろう 一応これ、全部自分のおこづかいで買ったんですよ(笑)。欲しいものはあるんですけど、いったん休んでます。

キャンプ場には行かないんですね。

かつじろう そうですね。あまりやりたいという気持ちもなくて、庭で完結してますね。

家の庭がいいんですね。

かつじろう あとはバーベキューもやりたいです。実は近所の迷惑にならないように、あまり煙が出ないカセットコンロをもう買っていて。

それは、ビールが美味しいでしょうね(笑)。ますます、家だけでキャンプが完結しますね。

かつじろう そうです。家の中に入ってゲームして、出てきて外で遊んで。もう家から出なくていい(笑)。

広々としたリビングの奥にカウンターキッチン、庭とシームレスにつなげて、駐車場の後ろにタープを広げて、そこを子どもが自由に行き来する。それが柏木家の完成形ですか?

かつじろう まさにそうですね。いずれは日よけのところにウッドデッキをつくりたいんですが、いまは子どもが芝生で思いっきり遊んでいるので、巣立ってからかな。

それにしても、今年引っ越されてきて、子育てもお仕事もしながら、ここまで色んなものを作るのは大仕事でしたよね。

かつじろう 私がやりたいと思ったら、ずーーーっとネットかで調べちゃうタイプで。もう、どれだけ検索しから分からないくらいやり込むんです。

ひとみ ホントに、ずっとみてる(笑)。

かつじろう この芝を張るのも、頭の中で何回シミュレーションしたか。

ひとみ でもやり始めてからのスピード感は良かったですね。土のままだと、雨が降った時に足跡が残ったりしてたので。

じゃあひとみさんにとっても、庭は大満足ですね。

ひとみ ここ、いいですよね。芝にしてホントによかったです。

庭でのキャンプはどうですか?

ひとみ たぶん秋になって、気候が心地よくなってきたら、もうちょっといいなと実感できると思います。

しほちゃんは、どうですか? この庭。

しほ うんとね、引っ越してきてよかった。

かつじろう よかった~(笑)。

これだけ充実していると、あまりお出かけはしませんか?

かつじろう 結構してますよ。じゃあちょっと片付けて、外に行きましょう。

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