家と暮らしを見つめるウェブマガジン

ひらやま家の人々

我が家のけしき ひらやま家

イラスト

仲むつまじく、お店とともに。
ちょうどいいリズムが紡ぐ新たな縁

時代小説『のぼうの城』の舞台で知られる忍城は、勇壮な三階櫓が行田の歴史を伝える。その近くに「食事処みずしろ」はある。2 階建ての民家のような佇まい。真新しい外観だが、足を踏み入れると、親戚の家に来たような安心感に包まれる。ここは、料理の腕と持ち前の明るさで数々の飲食店を営んできた夫妻の新天地なのだ。

  • 夫:まさしさん

    夫:まさしさん
    静岡県生まれ。74 才。食事処みずしろの仕入れ・調理担当。18 才で割烹修行をはじめ料理の道へ。これまでに各地で6店舗を経営する。

  • 妻:ひさえさん

    妻:ひさえさん
    埼玉県生まれ。66 才。食事処みずしろの接客、調理補助担当。お客さんと自然に会話できる天性の才を持つ。韓流ドラマにハマり中。

写真:tsukao

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二人の休日
-商いのスタンスと離れない人生-

憩いの韓流ドラマ

<翌日の休日に再訪。2階の居間にて>

昨日、お二人が働いているところを見せていただいて、このお仕事がお好きでたまらないんだなって思いました。

まさしそうだと思います。

今日みたいな休日は、何をするんですか?

まさし前はよくゴルフに行ってたんだけど、最近パッタリやらなくなっちゃった。

ひさえ月2回のゴルフ、楽しみにしてたよね。

ゴルフはいつごろから?

まさし20歳くらいからかな。昔はお金がないから、おにぎりを持参して芝生の上でお昼を食べてました(笑)。お金持ってる人は、ぱっと食堂入るんだけどね。

打ちっ放しではなく、コースに行くんですね。

まさしそうです。とにかくプレーすることが好きで。クラブセットはまだあるんですが、こっちに来てから、ちょっとご無沙汰になっちゃって。

ひさえたぶん、やらなくてもいいかなって本人が思い始めたんだと思います。それより「みずしろ」をって。

なるほど。休日の朝は何時に起きてます?

まさし6時半とかかな。

ひさえそうね。平日と起きる時間は変わらないね。7時半か8時くらいまでにはパン食べて、それから今日どうする?って話して。

朝食はパンなんですね。

ひさえ私がパンが好きなので、合わせてくれてます。ウチは、ピザトーストと、バターロールを焼いてはちみつをかけたやつが定番です。それに、バナナとヨーグルトと牛乳。

まさしバナナは必ず食べますね。こっち来てからの習慣で、テレビで身体にいいって言ってたので。

朝ごはんの後は何してるんですか?

まさしテレビ見てだらだらしてますね(笑)。

ひさえ いま韓流を録画してるので、それを二人で見るんです。「冬のソナタ」とか、そういう昔の人気作です。

まさし最近は、時代劇の「イ・サン」が面白かったね。

ひさえ面白かったね~。そういうのを2話くらい見てるとお昼くらいになる。それから、どうする?スーパーでもいく?って。

その買い物は、プライベートのものですか?

まさし基本はそうです。ただ、お店で使えるって思う野菜やお肉は買っちゃいます。

休日の買い物は二人で行くんですね。

ひさえそうです。マスターが選ぶので、私は見てるだけ(笑)。

買い物が終わったら、外食せずに、家に帰ってくることが多い?

ひさえ圧倒的にそっちのほうが多いですね。マスター、飲みたいから(笑)。

まさしお刺し身とかを自分で作って、2階の居間で飲むのが好きなんです。

晩酌は2階の居間で

平日の仕事終わりも同じ感じですか?

ひさえそうですね。仕事終わりもそんな感じですね。

どんな感じなのか、ちょっとやってみてもらってもいいですか?

まさしじゃあちょっと、飲んでいいですか?

もちろんです。

ひさえ わたしはお水で。

まさし (ビールを持ってくる)つまみはそこに。

このキムチのケースに入ってるやつですね。これ、お気に入りなんですか?

ひさえそれぞれ座る位置が決まってるから、それぞれの棚に、喧嘩しないように分けてあるの。

それが、同じキムチのケースに入ってるんですね。

ひさえそうです、そうです。入れ物は同じなの。いまは、この小魚とピーナッツの小分けパックにはまっちゃって。

いいですね。場所は、居間がいいんですね。

まさしなんだかイヤなんですよ。お店の延長みたいになるのは。

休日の晩酌は、ビールですか?

まさしいつもはまずビールだね。それから、焼酎を2~3杯。夕方くらいから飲み始めます。

ひさえ朝起きてだらだらして、午後くらいに買い物行って、夕方前には帰ってきて、夕食がてら飲む。そんな休日です。

どこかへ遊びにいくことはないんですか?

まさし近くのスーパー銭湯みたいなところには行きます。サウナが好きでね。

ひさえあとはたまに、視察がてら外食することもあります。トンカツが美味しいって聞いたら、行ってみたり。

おお、視察ですか。

まさしどういう料理を出してるのか。味だけじゃなく、雰囲気や価格設定まで、けっこう細々と見ますね。

それは、お店の参考にするんですか?

ひさえそんなにたいそうな物じゃないんですが、そういうのを参考に、定食に何つけようかとか、こういうメニューを作ってみようかとか、話します。

それもお二人でやるんですね。

まさしそうです。ウチは365日一緒ですから(笑)。

愚問かもしれませんが、二人でいることに飽きたりしないんですか?

ひさえもうね、そういう次元じゃないの(笑)。ケンカしたって、一緒にいるしかない。

ケンカ、するんですね。

ひさえしますします。一方的に私が怒ります(笑)。

まさしもちろん、うるせえな!って思うときもありますよ(笑)。

酸いも甘いも二人一緒

お二人は、旅行は好きですか?

ひさえええ、好きですよ。子どもが小さい頃は、年に2回は旅行してました。こういう商売してると、普段は子どもにかまってやれないので。

まさしお盆の後くらいの時期に、伊香保とか、塩原とか、日光あたりによく行きましたね。

近隣が多いんですね。

まさし僕ね、北海道と沖縄は、行ったことないんですよ。

ひさえ私たち、長いあいだお店を休むのがイヤで。旅行もせいぜい1~2泊なんです。

そうなんですね。ちなみに、お散歩はしますか?

ひさえ暖かい季節はしてましたね。休日とか、朝とか。

まさし忍城も、最初の頃は見に行ったよね。この辺りは桜も咲くので、二人で見ました。

今の家に、お子さんたちが来ることもありますよね。

ひさえ息子も娘も、ときどき帰ってきてくれます。そういうときは、マスターが腕を振るって、茶碗蒸しとか、蟹釜めしとか、いろいろ作ります。

まさし張り切って前日から仕込んだりして。やっぱり、喜んでほしいから。

あのちょっと思ったんですが、お二人って、別行動することはあるんですか?

ひさえないですね(笑)。

まさしそう。いつも一緒。それが普通です。

ひさえケンカしてもお店って休めないじゃない。だから、いつのまにかなーなーになっちゃうんですよ。でも、お店が楽しいから。

それはきっと、大事なことですよね。

ひさえ若い頃は、お客さんの前で涙したこともありました。でも、家を買って、借金抱えて、子どもを育てて、色んなお客さんと接してきて、ようやく色んなことが、楽しくなってきたんです。

もし需要が出てきたら、お酒をもっと出して、遅くまで営業する可能性もありますか?

まさしもちろん、動けるうちはね(笑)。

ひさえそうだね。お客様がいらっしゃれば、夜遅くても店開けますよ。

まさしときどき夜に来るおじいさんがいるんですが、その人にも夜8時や9時になっても、帰れとは言わないです。

まだ、お二人のお店はゴールじゃないんですね。

まさしでも多分、死ぬまで二人でお店をやっていくんだと思います。続けられる限りは、この家で、この店で、こういう感じで行きたいなと思ってます。それが楽しいので。

ひさえ働かないで二人でいても、ボケちゃうし(笑)。

お二人は「仲がいい」っていうより「二人で一つ」って感じがしますね。

幸せな仕事と、幸せな人生

ちょっと不毛な質問かもしれませんが、お二人は仕事の日と休みの日、どっちが好きですか?

まさしそりゃね、休みの方が好きですよ(笑)。気遣いしなくて済むじゃないですか。

ひさえそうですね。やっぱり休日は、気持ちが全然違いますよ。

お二人でもやっぱり、営業中は楽しいだけじゃないんですね。

XXXX

ひさえもちろんそうです。気は張っちゃいますし、未だに営業中は緊張しますよ。

それでも、お店の上に暮らして、いつも二人一緒。端からみたら、この仕事に人生を捧げていらっしゃると思うんです。

まさしそうかもしれませんね。

そういうことを、これからも続けていこうと思えるモチベーションって何ですか?お客さんの喜ぶ顔が見たいからってことなんでしょうか。

まさしもちろんそれもあります。それがなきゃこの商売はできません。だけど、本当の一番は自分の喜びですよね。働いたから、今日もおいしいお酒を飲める充実感っていうのかな。

ひさえそうですね。収入がなければお酒も買えないしね。子どもたちにもいくらかは残してあげたいですから。

ちなみに、いまの暮らしで一番幸せを感じるのは、いつですか?

まさしそうですね。仕事が終わって、二人で2階に上がってきて、お酒飲みながらテレビをぼーっと見てるときですね。

ひさえそうね。

それは、お店の上に住んでいるからこそですね。

まさしそうそう!お店と住む場所は一緒。この一体感がいいんです。